近年のルアーでは当たり前となっている重心移動システム。
重心移動システムはタックルハウスのK-TENルアーから始まり、その後はボールウエイトやマグネットを利用したものを中心に、各社様々な重心移動システムが開発,製品化している。
そんな数ある重心移動システムの中で、性能が抜きん出たのが、シマノのAR-Cシステム。
特にサイレントアサシン140Sは、AR-Cシステム搭載ルアーの中でも秀逸。
これまでも他の重心移動システムのものも試してみたが、このAR-Cシステムを上回る、または同等の使用感をもったものが出ることがなかった。
一方、最近購入したアイマのsasuke120裂空。
これはアイマが新たに開発したMRDなる重心移動システムを採用したフローティングミノーだが、使ってみるとこれが予想以上!なかなか!
>>sasuke120裂空(ima)の使用感。MRDシステムの効果は如何に?(2020/11/30)
AR-C搭載ルアーを上回るとまでは言い難いが、AR-Cに近いと言っても良いほどの使用感で、かなりの好印象を得た。
そこで今回は、表題に「AR-C v.s. MRD」としたが、まずはこれらのシステムの構造的な違いから、それによって得られる効果まで、素人ながら深掘りしてみたいと思う。
AR-Cはバネを利用
重心移動システムとして定番になっているシマノのAR-Cシステム。こちらはウエイト移動にバネを利用しているのが最大の特徴。
キャストの遠心力によってウエイトが後方へ移動するが、飛行中に遠心力とバネの力が釣り合うあたりでウエイトが前方へと徐々に移動しながら着水する。だから、着水直後でも泳ぎ出しがスムーズなわけ。
キャストから着水までに自動でウエイトが戻る重心移動システムは、これまではこのAR-Cシステムしかなかった。
数々の重心移動システムの中では、トータルでこのAR-Cシステムが抜きん出ていたといっても良いだろう。
そのため、自分がサーフで使用しているミノーのメインは、このAR-C搭載ルアーで占められている。各サイズのメインはすべてAR-C搭載ルアーで揃えられている。
それほどの信頼を置いているのが、このAR-Cシステムなわけだ。
MRDは磁石の反発を利用
対して、アイマが開発した重心移動システムであるMRDシステム。
以前の記事でも紹介したが、MRDは”Magnetic Rebound Driving”の略で、AR-C同様に着水間際のウエイト戻りに焦点を当てたシステムとなっている。
>>MRDシステム−imaの新しい重心移動システムってどうよ?(2019/9/26)
これまでのルアーはスイム時にウエイトを安定させるために、前方へ吸引の磁石を設置しているものばかりだったが、アイマのMRDシステムはそれに加えて後方にも磁石を設置しており、それが反発のものを採用しているのが特徴。
これにより、キャストの遠心力によってウエイトが後方移動するが、AR-C同様に飛行中に遠心力と後方磁石の反発力が釣り合うあたりでウエイトが前方へ徐々に移動しながら着水していくので、着水直後の泳ぎ出しも非常に良好。
実際にsakuke120裂空を使ってみたが、使い勝手がAR-Cシステム搭載のルアーに近いものを感じた。
これを使って80アップのシーバスからタチウオまでの釣果が出たわけだが、この釣果の意味するところは、使用感が良いために使用頻度が高くなったことで得られたと思っている。
魚の好む泳ぎなんて、この不肖ゆたりなが知るわけがない。
泳ぎの質云々より、ユーザー側が使いやすいこと。実はこれが最も釣果につながる要素だと思っている。
そういった意味では、AR-Cと共に、このアイマのMRDシステムも同様のことが言えるだろう。
AR-CとMRDの共通点
「玉入れ」動作の必要なし
AR-Cシステムはウエイト移動の後方にバネを入れ、MRDシステムはウエイトと反発する磁石を後方に入れている。
バネと磁石との違いはあるが、いずれの重心移動も、キャスト後にウエイトを強制的に戻すシステムを入れている点は共通している。
他の重心移動システムのルアーは、キャスト時にウエイトが後方に移動はするが、ウエイトが移動したらしっぱなしなので、着水時もウエイトが後方にあるまま。
したがって、玉入れ操作をしないと泳ぎ出し時に潜らずに海面を滑ってしまう。
だから着水後は、ロッドを煽ったりリールを速巻きするなどの「玉入れ」動作が必要となる。
一方のAR-CとMRDは、これまでの重心移動ルアーで必須な着水後の「玉入れ」動作をする必要がない。
すなわち、キャストで後方に移動したウエイトが、着水と同時に自動的に前方へ移動するので、泳ぎ出しがすこぶる早い。
ということは、ルアーを飛ばした距離分を、最初のスイムロスが発生することなく、有効に魚の誘い出しができるということ。
あとは、重心移動システムのルアーを扱う上で必須の動作が一つ減ることにもなるわけだ。
重いウェイトが入れられる
AR-CとMRD、どちらも円筒状のウェイトを採用している。
この構造の良いところは、重量のあるウエイトを搭載できること。
ボールタイプだと隙間が多いため、その分、重量のあるウエイトを乗せるには限界がある。
よって、少ないスペースでウエイトを最大限入れられる円筒形状は、ルアーの飛距離を出すためには必要な要素。
ルアー重心がしっかりと下向に乗るので、速巻きをしても安定した泳ぎを実現できる。
飛行姿勢が安定している
そして、どちらも飛行姿勢が安定しており、キャストごとのバラツキが少ない。
AR-Cシステム搭載のルアーは飛行姿勢が安定しているだけでなく、キャスト後半が急速に失速しないので、後半の飛距離が伸びるような感覚があるが、現在使用しているMRDシステム搭載のsasuke120裂空も同様に感じる。
AR-CもMRDも初速時はウエイトが最後方に移動するが、飛行中に加速度が落ちるにしたがって徐々にウエイトが前方へと移動する。
この飛行中のウエイトバランスが、飛行姿勢の安定のみならず、飛距離を伸ばす大きな要因ではないかと思っている。
しかもこの飛行姿勢の安定度は、強風のときでも発揮されるのが、これら2つの重心移動システムの凄いところ。
これまではミノーのラインナップはAR-C搭載のルアーが中心であったが、今後はアイマのMRD搭載ルアーもそれに加わることになるだろう。
どちらの重心移動システムに軍配?
ここまでつらつらとAR-CとMRDのことを述べてみたが、では、どちらの重心移動システムが優れているのだろうか?
ハッキリ言って、使用感だけで言うならばほぼ同等、明確な差は見られない。それだけ甲乙つけがたい。
あえてポテンシャルだけで考えるならば、ルアーの内部スペースを最大限に有効活用できそうなMRDの方が上かもしれない。AR-Cはバネを埋め込むスペースが必要となるが、MRDは磁力の調整で薄い磁石を埋め込めば、余計なスペースをとらないだろうからね。
まぁ、スイムバランスやら飛行バランス等も考慮する必要があるだろうから、一概には言えないだろうけど。
確かにこれまでの重心移動システムの中ではAR-Cシステムが独壇場で、他の重心移動システムは理屈でも使用感でも太刀打ちできないものばかりであった。
これまでのアイマのルアーは、あのボール型の重心移動がどうしても好きになれなかった。だから西湘サーフでもsasukeシリーズが釣れるし人気があると知っていながらも、なかなか入手する気にはなれなかった。
しかし、アイマのMRDシステムが登場したことで、シマノのAR-Cシステムと同レベルに達したと言っても過言ではないと感じている。それほど、MRDシステムの使用感は良好。
重心移動システム搭載のミノーについては、よほど尖った特徴がない限り、AR-CやMRD搭載機種以外のものは買わないだろう。
ちなみに現在、AR-Cシステム搭載で最大サイズは、このサイレントアサシン160F。
これ以上のサイズで所有しているルアーは、200mmサイズのフローティングミノーであるタイドミノースリム200(DUO)と、170mmサイズのシンキングミノーであるアスリート17SSV(ジャクソン)。これらいずれもボールタイプの重心移動システムを採用。
アスリート17SSVは、ボルテックスジェネレーターを採用していることからも飛距離重視は分かるが、やはり着水直後の立ち上がりには難がある。
タイドミノースリム200については、キャストムラが大きいため、使用条件がどうしても限られてしまう。
これらサイズのルアーにAR-CかMRDが搭載されれば、買っちゃうかもしれないな~。
個人的には、MRDシステム搭載のデカミノーが出ることを期待している。
このサイズになるとこれら重心移動システムがうまく機能するのかよく分からないが、とりあえずは今後に期待しましょう!
コメント